1963年生まれ、岡山県高梁市出身。新見中央病院小児科医。1988年島根医科大学卒。岡山大学病院などに勤務後、1994年より大阪府立母子保健総合医療センターで新生児・未熟児医療を研修。2006年より新見中央病院小児科で地域小児医療に従事。

県北西部にある新見市に暮らす子供たちの両親は、五年前から安心して子育てが出来るようになった。それは、藤本喜史医師が新見中央病院の常勤医としてやってきたからだ。非常勤の医師が週に何度か来るだけだった新見市で、小児科専門医の常勤を熱望する市民一万人以上の署名が集まったと聞き、藤本医師は自ら手を挙げ常勤医となることを決めた。「岡山市も慢性的な医師不足だけれど小児科医はたくさんいる。新見市に誰もいないのなら自分がやろうと思った。」と藤本医師は言う。ひとりで新見市の子供全員を診るという重圧と、片道1時間半の通勤時間は、精神的にも体力的にも厳しい環境になることは分かっていたが、困っている人の役に立ちたいという思いが勝った。温厚な性格のうちに秘めた想いは熱い。藤本医師が着任し以前より小児医療の環境は大きく改善されたが、それでもまだ満足ではない。夜間や休日に具合が悪くなった子供は以前と同じように岡山市や倉敷市に向かわねばならない。「せめてあと一人、小児科医が来てくれれば交代で診療できる。つらい思いをしている子供達が何時間もかけて他の病院にいかなくてもいいような環境を早く作りたい。」と語る眼差しからは、本当に子供たちを大切に思う気持ちが伝わってくる。