岡山大学病院准教授。1967年生まれ、広島県福山市出身。1992年岡山大学付属病院第二外科に入局し、その後オーストラリアの心肺移植センターで5年間勤務。日本移植学会生体移植ガイドライン作成委員会委員などを務め、岡山大学病院で肺移植チーフとして数多くのオペを執刀する。2011年、岡山県文化奨励賞を受賞。

臓器提供不足などの理由で日本ではまだまだ現実的なものとはいえない移植医療。そんな現状を切り開くのは、岡山大学病院准教授、大藤剛宏医師。海外の心肺移植センターで肺移植手術約200例という実績を積み、帰国してからは移植や呼吸器に関する数々の委員会でも活躍。まさに日本を代表する肺移植医と言っても過言ではない。今年、世界で初めて母親から3歳児への生体肺中葉移植を成功させたのも彼だ。肺の中で最も小さく、移植できないとされていた中葉という部位の移植は、成功例のない非常に困難な手術だった。大藤医師はチャレンジした理由を「自分が断ればその子は死ぬ。挑戦することで助かるかもしれない命があるなら、やるしかないと思った。」と振り返ってくれた。結果、彼はその技術力で見事手術を成功させ、小児ドナー不足解決への道を開いた。また、肺ガン患者の肺を1度摘出し、ガンの部分だけ取ってまた体内に戻すという自家移植や、移植で使用する脳死肺を良好な状態に保つ体外維持装置を国内で初めて導入し改良を重ねるなど、未踏の領域に次々と挑戦している。 「手術の成功例を模倣し命を救うのも大切だが、自らがパイオニアとなって新しい成功例をつくることで医学は進歩し、救える命が増える。」と語る大藤医師。これから他の分野や臓器においても、アイデアや技術をシェアし貢献したいという。今まで救えなかった命に未来をつくる。彼の挑戦は多くの人の人生に光とよりたくさんの輝かしい人生をもたらしてくれるに違いない。